• SHIMICOM 2012年6月号特集READ:「花を贈る」花を贈るのは恥ずかしいと思う日本人男性が多いのだという。芦屋と青山で花屋を展開しているアイロニーの谷口敦史さんによれば、女性に花を贈るのに特別な理由は要らないと言い、普段食事に行く時などに花を一本持って行くだけで女性に喜ばれること間違いないそうだ。谷口さんに花を贈るコツを伺った。

    2012年6月特集「花を贈る 」
  • 2012年6月特集「発信して人を呼ぶ、新しいスタイルの花屋 」

    東京・南青山にあるレトロなマンションの一室。「こんなところにお花屋さんが!?」と誰もが思うこの場所に『florist jardin du I'llony』はあります。 ドアを開くと独特の色や形をした花と植物が並び、そこはまるで別世界。一体なぜこんな密やかな場所にお店を構えているのでしょう? 実はこちらは、インターネット販売が主流の花屋さん。店独自の個性が息づくフラワーアレンジをインターネットで発信し、それを見て人々が購入するのです。 従来の花屋さんとはチョット違ったこのスタイルを確立した、オーナーの谷口敦史さんにお話を伺いました。

  • 人生を変えた一本の映画

    (SHIMICOM)花屋さんになったきっかけを教えてください。

    (谷口)上京して間もない頃、映画に関わる仕事をしたいと漠然と考えていた時に、たまたま『マンハッタン花物語』という映画を見ました。 ストーリーの中で、花屋の店主が主人公の女性を花の配達に連れて回るシーンがあるんですが、行く先々で、花を受け取った人たちは皆とっても嬉しそうな表情になるんです。 そこで店主は彼女に「花屋っていうのは人を笑顔にすることができる仕事なんだよ」と話をするんです。 それがすごく印象的で。そのまますぐに花の配達のアルバイト募集を出していた花屋に「雇ってほしい」と飛び込んだんです(笑)。 最初はただ花の配達をしたいと思っていただけだったのに、花と接する中で、花にはものすごいパワーがあるなと感じる機会が増えて、 この仕事は自分に向いてるかもしれないと思うようになりました。 お客様が思いを託した花を相手の方に届けた時、やっぱり皆さんすごい笑顔になるんです。 それを見ると「あっ、あの人の思いが伝わったんだな」ってわかるんですよね。そこがこの仕事の面白いところで。 花屋になろうと決めてからは、花のアレンジメントは独学で勉強しました。

  • 主流はインターネットでの販売

    (SHIMICOM)こちらのようにマンションの二階にある花屋さんって珍しいですね。

    (谷口)隠れ家みたいな花屋だとよく言われますね(笑)。 だから、たまたま通りかかって入ったという方はごく稀で、わざわざ来てくれるお客様がほとんどです。 花屋にはいろんなスタイルがあって、花にまつわることはどんなことでも対応しますという花屋もありますが、 アイロニーの場合はもっと特化した形でやっています。具体的に言うと、うちの店が得意とするアレンジの見本を見ていただいて 「こういうテイストをお求めの方はぜひいらしてください」というスタイルです。 今はインターネットでの注文が8割で、2割が来店注文です。インターネットの方は、HPに掲載している花の作品を見ていただいて、 その中から注文していただくという形になります。

  • 店の個性に惹かれて人がやって来る

    (SHIMICOM)なぜそうしたスタイルに?

    (谷口)花屋で、予算と希望の雰囲気を伝えて作ってもらったけど、思ったような仕上がりではなかった、ってがっかりされた経験がある方もいると思いますが、 そういうことをできるだけ少なくしたいと思ったからです。そのためにも、まず店の傾向を知っていただき、 それを求めるお客様がいらしてくれると満足度が高くなるのかなと思いました。 僕としては、それぞれの花屋の傾向をもっと知って欲しいなと思っています。 例えば、飲食店を選ぶ時って、ここはフレンチ、ここは焼肉屋、ってその店が何を作っているか何を得意としているかをわかったうえで行きますよね。 でも花屋は、どこに行っても同じだと思っているかもしれません。本当は花屋にも、あそこはフレンチ、あそこは焼肉屋、くらいの明確な違いがあるんですよ。 それを知ってもらう意味でも、アイロニーの花はこういうテイストですよ、とインターネットなどでもっと積極的にアピールしていきたいなと思っています。 花って贈り物の要素が強いので、できるだけ広い層の人にいいな、綺麗だなって感じてもらわないといけません。 そのためには、誰もが持つ本能的な部分に訴えるようなものを取り入れないといけないのかなと。だから僕の場合、 色気というところは一番大事にしています。変な言い方ですが、エロいなと感じさせるような花ってあるんですよ(笑)。 仕入れの時に、これは色気がある花だなと感じたら、すぐに買いますね。そういうものを意識して仕入れたり、アレンジに組合わせたりしています。

  • 花屋との付き合い方

    (SHIMICOM)先日、アイロニーの花を一冊にまとめた雑誌も出版されましたね。

    (谷口)フラワーアーティストなどの花の芸術作品的な写真集はたくさんありますが、値が張るので結果的に好きな人だけが購入するということになってしまいがちです。 だからもっと気軽に買えて、花にそれほど関心がない人でも「あっ、綺麗な本」と気楽に手に取れるものを作りたいと思いました。 写真は今まで仕事で作ってきた作品を撮り貯めたものなので、アイロニーのカタログ的な要素もあります。これを見ていただいて、 うちの作る花というものをもっと知ってもらえるきっかけになればと思っています。

    (SHIMICOM)花屋さんとの付き合い方についてアドバイスをお願いします。

    (谷口)いくつかの花屋のテイストをある程度知っておいて、送る相手やニーズに合わせてお店を使い分けて欲しいですね。 そして、できるだけその花屋と長い付き合いをして欲しいです。例えば、花のアレンジをオーダーしたけれどあまり気に入らなかった、 ということがあれば、それを花屋にどんどん伝えて欲しいんです。そうすると、「あっ、この人はこういう花は好みじゃないんだな」とか 「こういう雰囲気が好きなんだな」と、花屋もその方の好みを把握できるようになってくるので。花を贈る機会が多い人ほど、そういう付き合い方をして欲しいです。

  • 日常で花を贈り合って欲しい

    (SHIMICOM)ちなみに、谷口さんはどういった場面で花を贈りますか?

    (谷口)僕は初めて会う方にはよく花を持って行きますね。男性の方って、ここ一番みたいなときに花を使われますけど、それだと変に構えてしまうじゃないですか。 だから知り合いによく言うのは、何もない普通の日に贈る方が効果があるぞと(笑)。 記念日に花を贈るのもいいですが、ちょっと食事に行くなんていう時に、何か一本花を持って行ったりするとすごい喜ばれますよ。 逆に女性も男性に花を贈ってみて欲しいですね。花を貰う嬉しさを知った男性は、きっと女性に花を贈りたいと思うようになるはずです。 花を通して喜びの連鎖が生まれたらいいなと。男女問わず、普段からもっと花を贈り合うシーンが増えることを願っています。

    (取材を終えて)

    洋服屋さんのブティックがあるように、アイロニーという花屋さんのブティックを目指して足を運ぶという感覚。 これって斬新だと思いませんか。そのためには店の個性を知り、いくつかの選択肢を持つことも必要というわけです。 今までとは少し違った視点で花屋さん探しができそうですね。あなたも、行きつけの花屋さんをもっと増やしていきませんか?

    (雑誌情報)
    オーナー谷口さんが自身で撮りおろした花の写真雑誌『FLOWBULOUS(フラピュラス)』。定価500円。インターネットにて販売中。 http://www.illonyshop.com/
    (クレジット)
    取材・文  鈴木ハルカ
    写真      円山正史(円山写真事務所)
  • 朝4時の花市場。暗いうちに摘まれ、月光の下を運ばれてきたのは寝起き顔の花たち。

  • おはよう、おはよう。

  • さあ、大きく伸びをして。一日の始まりです。

  • 6月の陽射しを浴びて、花たちは輝きだします。