• 特集「親と子の新レッスン」

    特集2「親と子が一緒に始める太鼓教室」 インタビュー「親子で太鼓」:鈴木弘美さん

    特集1「夢をかなえるピアノ・レッスン」 インタビュー「NYスタイル ピアノ・レッスン」:糸井恵理子さん

    今月は、ちょっと視点を変えて「子どもの習い事」を取り上げます。 「水泳」「ピアノ」「英語」が習い事の人気御三家だそうですが、 最初は喜んで通っていたお子さんが、そのうち「シブシブ」、やがて「イヤイヤ」に。 習うのはお子さんなのに、いつのまにか親の方が一生懸命になってしまって・・・ よく、そんな声を耳にします。 今回、取材の中で私たちが目にしたのは、 まだオムツが外れないお子さんが揚々と太鼓を叩き、 ピアノレッスンにマイケル・ジャクソンの楽譜集を抱えてやってくるお子さん! 「こんな教室だったら、私も通いたかった!」 さあ、親も子も満足できる新しい形の習い事、始めてみませんか?

  • 夢をかなえるピアノ・レッスン

    プロフィール 糸井 恵理子(いとい えりこ)。ピアニスト、ピアノ講師。2歳よりピアノを始める。日本女子大学附属豊明幼稚園時代から、ニューヨーク ジュリアード音楽院のMartin Canin教授に見出され、日本とアメリカを行き来する生活を送り、幼い頃より国内外でオーケストラとの共演を含め演奏活動を開始。ジュリアード、NYUで学び、博士課程修了。出産を機に日本に生活のベースを移し、NYでの活動を続けながら日本では、"Eriko Method"を基に、大使館など国際色豊かなバックグラウンドを活かしたピアニストとして演奏や講演活動、英語でピアノレッスン、企業向けコンサートやレッスン活動を行なっている。Babies & Kidsと一緒に大人が愉しむことができる本格的なクラシカルピアノコンサート、東京都主催によるコンサートやレクチャーをはじめとする指導や演奏活動他、各国フェスティバルなどにも出演など、活動は多岐に渡る。
    E-mail:StrawberryChampagneOp5@gmail.com"
    facebook:facebook.com/ericoitoi

  • (SHIMICOM)「NYスタイルピアノ・レッスン」とはどういう内容なのですか?
    (糸井)実はNYスタイルと自分で言い始めたわけではなくて、周りの皆さんがいつの間にかそう呼んでくださるようになりました(笑)。どういうレッスンかと言うと、一言でいえば“枠の外”を尊重するレッスンです。
    私は日本とアメリカでのレッスンを経験しましたが、日本の先生は生徒を枠に収めようとします。私も子どもの頃、いろんなピアニストが弾くピアノを聴いて「私ならこんな感じがいいな」という自分なりのイメージを持ってレッスンに挑んだのですが、「そのテンポじゃない」、「あなたは早すぎる」って一方的に直されてばかりで。一生懸命練習して行ったのに、あっさりと否定されるのが、子供心にわだかまりとして残りました。
    ところがアメリカの先生に出会って、世界が180度変わりました。まず「こう弾きなさい」がないんです!「自分がどう感じたか、音楽を通じて自分は何を表現したいのかが大切だ」と。先生は、私が感じたものを理解し受け入れてくれ、その上でそれをどう表現したらいいかを教えてくれた。つまり私が持っている可能性を最大限に引き出してくれたのです。
    こうして私は音楽というのが感情の表現であることを実感し、長い間のわだかまりからも解放されました。同時に本気で「ピアノが好きだ」と思えるようになりました。ですので、それをぜひ日本でも教えたいと思い、アメリカスタイルのレッスンを始めるようになったんです。
  • ((SHIMICOM)アメリカと日本のピアノレッスンはそんなに違うんですか?
    (糸井)アメリカでは、たとえば同じ先生についている生徒さんが同じ曲を弾いても、表現がまったく違うの(笑)。それは、先生がその子が感じるものを引き出してくれるからなんです。やはり人それぞれ感じ方が違いますから、表現も変わってくるのは当然ですよね。
    そもそも音楽って、人間の感情や気持ちを表現するもの。枠の外側を扱うものだからこそ存在意義があるのに、日本では枠に当てはまらないと否定されて、本来、自己解放であるはずの音楽が逆に抑圧になってしまい、子どもは面白くなくなってしまうんだと思います。
    (SHIMICOM)現在どういう生徒さんがいらっしゃるのですか?
    (鈴木)0才から80才代の方までと幅広いです。国籍もバラバラで、ハーフの方もいれば、アメリカ人、インド人の方も。英語で教えることもありますね。
    生後3ヵ月くらいのお子さんは、ママがだっこして座り、鍵盤を押せるようにするのですが、鍵盤は重いから最初は下がらないんです。でもそれが下がって音が出たりすると、もう顔つきがパア?ッと変わりますね(笑)。子どもにとっては、鍵盤が下がると音が出て、上がると音が消える、右が高音でキラキラしてて、左は低音でモンスターっぽい、とすべてが大発見で感動の連続なんです。お子さんは振動も大人以上に感じますから、ピアノの前に座ったりピアノの下にもぐりこんでその音や振動を体感し、心身共に音楽の楽しさを満喫していますよ。
  • (SHIMICOM)ピアノが初めてのお子さんにはどんなレッスンを?
    (糸井)これこそがアメリカンスタイルなんですけど、まず鍵盤全部を使って、黒鍵の2つのところと3つのところを両手で叩くことから始めます。子どもは叩くのが好きですから、手の平で「バン、バン、バン」と。黒鍵から始まる理由は、黒いからわかりやすいんです。「黒鍵は2つと3つのグループがあって、2つのグループのココがドよ」と言えばわかりやすいでしょう?遊んでいるように見せながら、何気なくそういう規則性を教えていくと、子どもも楽しみながら覚えるようになりますね。
    私はピアノの蓋を外して、ハンマーが弦を叩く様子を見せたり、どんどん触らせます。あと、鍵盤の奥に番号が振ってあるんです。1番から88番まで。これもあるお子さんがレッスンの中で見つけたんですが、その子は1から順に88まで全部数えるのが楽しくて仕方ないんですね。あるお子さんは、レッスンのはじめに必ず私が弾く「ドナウ」(※1)にあわせて踊りますし、一人として同じお子さんはいらっしゃいません。お子さんにとってピアノは大きな音の出るおもちゃなんです。その気持ちを大切にしてあげたいと思ってます。
    楽譜を持ってきたお子さんには、まず私が弾いてあげるんです。すると耳で覚えてしまうんです。頭の理解を通り越して、どんどん吸収していくんですよ。手が小さくても、ただ自分が聴いているものを実現したいという一心で、右手と左手を駆使して上手に音を取るんです。そういうのを見て、子どもってすごい! と改めて思いますね。

    ※1・・・「美しき青きドナウ」。ヨハン・シュトラウス作曲の有名曲で、欧米では社交ダンスでよく演奏される。

  • (SHIMICOM)お子さんたちはどんな風にピアノと向き合うようになりますか?
    (糸井)ご父兄の方は「親が困るくらいピアノを弾いている」とおっしゃっています(笑)。「練習しなさい」と言わなくても、楽しいから自ら弾かれるそうです。そのうち、耳で聴いた曲を自分で弾いたり、マイケル・ジャクソンの楽譜を持ってきて「これを弾きたい」と言うお子さんもいます。弾くことが楽しいし、自信を持って弾けるから、幼稚園や小学校の行事でも自らすすんで「ピアノが弾きたい!」と立候補するみたいです。そういう話を聞くととても嬉しくなりますね。
  • (SHIMICOM)お子さんの個性を引き出すために心がけていることとは?
    (糸井)反応を大切にしています。それぞれ発している信号が違うので、まず何に興味を持っているのかに気付いてあげることが大事。最初は何でもいいから興味のある所から入っていくのが一番いいんです。子どもが面白くないのに続けていても、ピアノが嫌になってしまうだけですからね。
    子どもは正直です。いかにハートをキャッチして、その欲求を満たしてあげるか、さらにはもっと可能性を引き出してあげられるか。それはこちらが「こうしなさい」と与えてできるものではないんです。
    私は、お子さんにもご父兄の方にも、思うことがあったら何でも言ってほしいと言っています。やはり信頼関係は大事です。私自身アメリカの先生から、音楽やピアノだけでなく人生を学びましたから。私は、レッスンで先生に会えるのが毎回楽しみだったんです。だから皆さんにもそう思って来てもらえたら嬉しいですね。
  • 親と子が一緒に始める太鼓教室

    埼玉県川口市で「親子で太鼓」という親子参加型の太鼓教室があります。 物心がつく前の乳幼児でも、すぐに夢中になって太鼓を叩き出すというから驚きます。 主催者で和太鼓講師の鈴木弘美さんに、子どもと太鼓の関係について、 また親子で一緒に太鼓を叩くことの効用についてお話を伺いました。

    プロフィール 鈴木弘美(すずきひろみ)。1977年埼玉県生まれ。和太鼓行衛町会「葉月会」代表。小学校2年生で太鼓を始め、鋳物の街・川口市の伝統芸能である初午太鼓を中心に、盆踊りの盆太鼓や創作太鼓の演奏を行なう他、祭り、福祉施設、企業イベント等で年間約60回の公演を行なう。個人演技、団体演技におけるコンクールでの受賞歴多数。2010年12月、鳩ヶ谷にて和太鼓教室「親子で太鼓」を立ち上げる。現在「親子で太鼓」、「大人の太鼓倶楽部」といった太鼓教室運営の他、初心者向けのワークショップを開催する等講師として活動している。 HP:http://wabunka-school.jp

  • (SHIMICOM)初心者のワークショップを拝見しましたが、子どもたちがのびのびと叩いているのに驚きました。
    (鈴木)小さなお子さんは技術的なことは年相応ですが、しゃべっている言葉や、楽しい気持ちをそのままリズムにして打つんです。そうすると身体に太鼓の振動がリズムになって返ってきますから、それがまた楽しいのでしょう。お子さんがお家で歌を歌いながら、何かリズムを作っては太鼓を叩いて遊んでいるという話をお聞ききしますし、うちの息子もよく自作の歌に合わせて自分でリズムを作って叩いています。 教室には様々なお子さんがいます。「お母さんと一緒がいい」というお子さんもいれば、やり方を教えても「自分のやりたいことだけやる」というお子さんもいて、その場合は野放しにしますね(笑)。やっぱり子どもは楽しくないとやらないので。礼儀や片付けといった部分ではけじめをつけますが、太鼓を叩くことに関しては、やらされているということのないようにしています。
  • (SHIMICOM)親子の太鼓教室を始めた経緯を教えてください。
    (鈴木)息子が4ヵ月の時、何気なく太鼓のバチを渡したら、驚いたことにバチを握って太鼓を叩いて遊び始めたんです。太鼓というのは口伝(くでん)で伝えていきます。たとえば口で「ドンドコドン」と言って音を伝えるやり方です。考えてみたら、親が子に「クック(靴)だよ」「スプーンだよ」って教えるのは太鼓の口伝と同じだと気付いて、「小さいお子さんでも太鼓ができるのでは?」と思ったのがきっかけです。
    当時私は子育てにかかりっきりで、自分自身子育ての大変さを感じていました。周りのお母さんたちを見ても「もう大変!」という声ばかりで。「じゃあ、私が太鼓を使って何かしよう」と思いたち、親と子が一緒に太鼓を楽しめる「親子で太鼓」を始めたのです。
  • (SHIMICOM)「親子で太鼓」はどういった内容なのですか?
    (鈴木)子どもだけが太鼓を叩くのではなく、親と子が一緒に太鼓を叩きます。普段はお子さんの年齢に合わせた指導をしています。まず全員で座礼をし、準備運動をして太鼓の練習に入ります。0?1才前半のお子さんは、お母さんと一緒にバチを持って叩いてもらいます。1才後半を過ぎたあたりからだんだんこちらの指示を聞けるようになり、3?4才になると「バチを持つ手を伸ばして」といった指示も聞けるようになります。
    (SHIMICOM)ずいぶん小さいお子さんから始められるんですね?
    (鈴木)0才から始められます。実際に指示を聞いて打てるようになるのは1才頃からですが、0才でもバチを握れば叩きます。身体が自然に動くのでしょうね。叩くと音が出るから、面白くてまた叩くんです。これは本能的なものかもしれません。というのは、母親のお腹の中で胎児が聞いている母親の心音と、太鼓の音の周波数がとても近いという研究結果があるんです。だから胎内で聞いていた心音と太鼓の音が重なるのかもしれません。実際、太鼓の音を聞きながら寝てしまうお子さんもいるんですよ。あんなに大きい音なのに(笑)。太鼓の振動は、空気を伝って自分の身体に戻ってくるんですが、その揺らぎが気持ちいいみたいですね。
  • (SHIMICOM)親子で参加することのメリットとは?
    (鈴木)子どもって何でも親の真似をして成長します。太鼓も同じで、母親が楽しそうに叩けば、それを見て子どもも面白がって叩くようになります。
    私は、親子関係に必要なのは共感だと思っています。太鼓を一緒にやると、「バチって重いんだね」から始まって、「このリズムは楽しいね」。「難しかったけどうまくできたね」。同じ舞台に立つ時は「一緒にがんばろうね」。演技が終わって「緊張したね」と、いろんな場面で共感が得られます。同じことをし、同じ気持ちを味わい、同じ光景を見たという経験は、お互いの信頼感にも繋がると思います。
    また、舞台に上がれば我が子ばかりに目を向けていられません。自分の演技もやらなければいけないし、あとは子どもを信じて任せるしかありません。それが子どもに「自分でやらなきゃ」という気持ちを芽生えさせ、結果的に自立に繋がるのかなと思います。お母さんたちは入会した時よりもきれいになるんですよ(笑)。やはり舞台等でお客さんから拍手をもらったり、褒められると嬉しいですから。それが子どもたちは嬉しいんですね。「今日のママ、すっごくかわいいんだよ!」とウキウキしているのがわかります。こういうのも親子関係には大事だなって思いますね。
  • (取材を終えて)。
    大好きなマイケル・ジャクソンの楽譜を広げ、目を輝かせて鍵盤を弾く6才の男の子、全身を揺らしながら上機嫌で太鼓を打つ4才の女の子。どちらのレッスンも従来の習い事とは少し違った、「子どものやりたい」を尊重したスタイルです。習い事というと、お子さんの様子を熱心に見守る親たちの方が一生懸命になりがちなイメージがありますが、今回取り上げた2つのレッスンでは、お子さんがのびのびと楽しむ姿に加えて、親たちも一緒になって楽しんでいる光景がとても印象的でした。
    物心がつく前の子どもには、「上手にやろう」という思いはありません。本能のままに鍵盤や太鼓を叩く。音が出るモノへの好奇心と、身体が感じるリズムの楽しさがそうさせるのです。まず純粋に「楽しいからやる」という経験こそが、お子さんの才能を開花させるきっかけになるのかもしれません。
    (クレジット)
    取材・文 鈴木ハルカ  
    写真   円山正史(円山写真事務所)