• 星空に涼を求めて ~六本木天文クラブ~

    最近、星を見ましたか? 慌ただしい日常の中では、意識して星を見る機会がほとんどないかもしれません。しかし、夏の夜空には「夏の大三角形」を始め、たくさんの星たちが瞬いています。この夏は夕涼みがてら外に出て、夜空を見上げてみませんか。 今回は、なんと東京都心の六本木で天体観測を行う天文クラブがあると聞き、主催の高梨直紘さんに、都会での夏の星空の見どころや楽しむコツを伺いました。

  • (SHIMICOM)どのような方が天体観測に参加されているのでしょう?
    (高梨)30~40代の女性が多いです。東京で星は見えないんじゃないかと思っている人は多いと思うんですが、そういう人に「東京って意外と星が見えるんです」とアピールしていく場として『六本木天文クラブ』を設立しました。 今は丸の内でも天文イベントを行っていますが、そちらも8割は女性ですね。実はこれ、科学館や天文台でやっている「星を見る会」や天体観望会とは全く違った客層です。これは単に場所柄だけでなく、女性の「星」への潜在的需要が高まっているからだろうと思っています。「星を見る」とか「宇宙について考える」とか、忙しい日常の中でそういう時間を作るのは価値があることだなと思ってくださる女性が増えているのではないかと。イベントの時などは400~500人来てくれることもありますから。

    (プロフィール)
    高梨直紘(たかなしなおひろ)。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム 特任助教/ 天文学普及プロジェクト『天プラ』代表。1979年広島市生まれ。東京大学理学部天文学科卒業、東京大学理学系研究科博士課程修了 (理学博士)、国立天文台広報普及員、ハワイ観測所研究員を経て現在に至る。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラムを担当。 HP http://www.tenpla.net/

  • (SHIMICOM)本当に東京・六本木で星が見えるのでしょうか?
    (高梨)見えますよ(笑)。ただし、目は暗い所で少し慣らさないと見えてこないので、3~5分くらい暗い外にいて、瞳孔が開いてから夜空を見るのがポイントです。一等星(※1)と言われるものや、北斗七星や北極星も肉眼でちゃんと見ることができます。
    東京都心は夜でも明るいと思われますが、エコや省エネ、照明を下向きに設置するといった取り組みで、10年くらい前と比べたら相当暗くなっているはずですよ。

    ※1・・・明るさの等級が一等級の星のこと。
    (SHIMICOM)みなさんの反応はいかがですか?
    (高梨)「惑星、初めて見た!」と感激する人もいるし、土星を見て「豚の鼻みたい」って言った小学生もいました(笑)。 みんなで一緒に星を見るというのは、ひとつのコミュニケーションでもあると思います。暗いから相手の顔がハッキリ見えなくてしゃべりやすいし、流れ星が流れようものなら、それはすごい一体感です。星には年齢も性別も超えたコミュニケーションの力があるなと思います。
  • (SHIMICOM)夏の夜空の特徴を教えてください。
    (高梨)まず夏の星座といえば「夏の大三角形」ですね。これは織り姫、彦星、そしてはくちょう座のデネブという一等星たちで作る三角形です。南の空には、さそり座といて座が見えます。惑星(※2)もたくさん出ていて、夕方西の空に土星や金星が、また明け方東の空に木星や火星が見えますね。 また、毎年夏は流れ星がたくさん流れる晩があります。今年は8月12日の深夜から13日の早朝にかけて、「ペルセウス座流星群」(※3)という流れ星がたくさん流れる日があるんですが、その日しか見られないというわけではなく、前後数日間は普段よりも比較的よく流れるので、ちょっと時間を作って空を眺めてみてください。一時間も眺めていたら、たぶん何個も数えられると思いますよ。ただペルセウス座流星群の流れ星は速度がとても速いので、あっという間に流れていきますから気をつけてくださいね(笑)。 ※2・・・恒星の周りを公転する天体のこと。太陽系では、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8つがある。 ※3・・・ペルセウス座のγ(ガンマ)星付近を放射点とする流星群。7月20日頃から8月20日頃にかけて見られ、8月12日前後に出現のピーク(極大日)となる。
  • (SHIMICOM)望遠鏡がなくても大丈夫ですか?
    (高梨)もちろん大丈夫です。どれも肉眼で見ることができます。惑星というものは明るいので、星を見た時に「明るいな」って思ったら、それは惑星の可能性が高いです。また普通の星はキラキラと瞬きますが、惑星は瞬かないところも特徴ですね。何時にどの方角に出ているのかは、国立天文台のHP(http://www.nao.ac.jp/)に載っていますからそれを参照してもらえばいいと思います。
  • 今年の夏、星を見ようと思う人にアドバイスをお願いします。
    (高梨)望遠鏡がなくても全く問題ありませんので、気軽にベランダから「今日は何か星出てるかな?」って見てみたり、仕事帰りなどにちょっと空を見上げてみるといったところから始めてみてください。 夜空を見ると明るい星と暗い星がありますが、これは、明るい星は手前にあって暗い星は遠くにあるということなんです。このように、夜空は単なる暗い平面ではなく奥行きのある世界だということがわかると、もっといろんな味わい方ができると思います。 また星座神話などを知れば、昔の人々の様々な思いをそこにみつけることもできます。そういう意味で、星空は時代と空間をこえたコミュニケーションツールだなと思います。 「もしかしたらあの惑星の上にも僕らと同じように、太陽の光を浴びて生活している生命の存在があるかもしれない」と想像してみるのも楽しいものです。そういうことを考えながら広大な星空を眺めていると、ストレスフリーになると思いますよ。「私の悩みは小さいな」って(笑)。
  • (SHIMICOM)今後の活動予定を教えてください。
    (高梨)主な活動としては、毎月第4金曜日の夜に六本木ヒルズ「東京シティビュー」のスカイデッキで行う「星を見る会」です。また七夕、中秋の名月、彗星の到来といった天文現象がある時もイベント的に開催しています。会社帰りなど誰でも気軽に参加できますよ。
    (取材を終えて)
    取材日は七夕。なんでも4年振りの晴れ間だそうで、地上238mの六本木ヒルズの屋上から空を見上げると、そこには確かに星空が広がっていました。惑星は肉眼でも見えましたが、天体望遠鏡をのぞき込むと更にクリアに。教科書でしか見たことのなかった土星の輪っかには感動すら覚えました。こうして星の存在を確認すると、夜の空がぐんと味わい深いものに見えてきます。 東京では梅雨明け早々連日の猛暑が続いていましたが、星を見上げているうちに、気がつけば夏の暑さをすっかり忘れていました。
    (クレジット)
    取材・文 鈴木ハルカ   写真   円山正史(円山写真事務所)