• 11号READ特集
    「クロマティックハーモニカに魅せられて」

    クロマティックハーモニカには、秋が似合います。

    ひとたび哀愁を帯びた音色が流れだすと
    あたりの空気があかね色に染まって見えます。
    夕やけ、こやけ。
    カラスが啼くから、帰りましょ

    今月は、クロマティックハーモニカの世界へご案内します。

  • 大振りなハーモニカを手に、リズムを取りながらジャズを演奏する若い女性。
    初めてその姿を見た時、あまりの格好良さにしびれました。
    その女性こそ、クロマティックハーモニカ演奏家として活躍する山下怜さん。
    クロマティックハーモニカとは一体どんな楽器なのでしょう?
    コスモスが咲き誇る秋の公園で、山下さんにお話をうかがいました。

  • (プロフィール)
    山下怜(やましたれい)/埼玉県出身。クロマティックハーモニカ&フルート演奏家。
    桐朋学園芸術短期大学音楽専攻(フルート)卒業。卒業後、クロマティックハーモニカの音色に魅せられ、日本を代表するクロマティックハーモニカ演奏家の徳永延生氏に師事。2011年モリダイラ楽器(株)関係企業主催の徳永音楽教室東京校開設に伴い代表専任講師に就任。
    中部、関東、東日本を中心にコンサートホール、ホテル等でクラシックのみならず、ポップス、ジャズ、スクリーンミュージック、歌謡曲等、多彩なジャンルの曲を演奏するクロマティックハーモニカ演奏家として活動中。
    2014年6月、第34回FIHジャパンコンテスト クロマティックハーモニカ クラシック部門、ジャズ・ポップス部門、アンサンブル小編成部門、全て第1位。同大会にて総合グランプリ獲得。
    [HP]
    http://reiyamashita.v1.weblife.me/#pagetop
    http://ameblo.jp/reiyamashita/
  • クロマティックハーモニカの特徴

    (SHIMICOM、以下S)クロマティックハーモニカとはどういう楽器なのですか?
    (山下さん)ハーモニカはドイツ生まれの楽器で、アコーディオンやバンドネオン(※1)と同じリード楽器(※2)です。もともとはオルガンの調律用の道具として作られ、その後改良が重ねられ今のような楽器になりました。
    「クロマティック」とは半音階という意味で、半音階が出せるハーモニカのことを言います。特徴は本体にボタンが付いており、このボタンを押すと半音上のシャープの音が出る仕組みになっています。
    例えば同じ穴でも、普通に吹くとドの音で、ボタンを押して吹くとドのシャープ、吸うとレ、ボタンを押して吸うとレのシャープの音になります。音域は4オクターブとかなり広く、ピアノの鍵盤の約半分となる64の音をこの一台で出すことができます。音色はハーモニカ特有の哀愁を帯びた音が特徴的です。

    ※1・・・主にタンゴで用いられる楽器。アコーディオンと形が似ているが、鍵盤はなくボタンを押して音を出す。

    ※2・・・発声源としてリードを用いる楽器の総称。オーボエなどの木管楽器やオルガンもその部類。

  • (S)クロマティックハーモニカとの出会いについて教えてください。
    (山下さん)13歳からフルートを始め、大学でもフルート専攻でした。大学を卒業しこのまま音楽を続けようか迷っていた時期に、たまたまインターネットの動画サイトでクロマティックハーモニカの演奏を見たのが最初の出会いです。その独特の音色に衝撃を受け、すぐに調べたところ、大阪に徳永延生先生という有名なクロマティックハーモニカ奏者がいらっしゃり教室を開いていることを知りました。
    当時私は埼玉に住んでいたので「大阪まで通えるだろうか」と迷いました。でも、やはり習いたいという思いが勝ち、一週間後には新幹線のチケットを手に徳永先生の所に向かっていました(笑)。運命の瞬間でしたね。
    実際に習い始めると、馴染み親しんだフルートとは全く違って、吸ってもなかなか音が出なかったり、音が混ざってしまったりと苦戦しました。でも練習して吹けるようになるのが楽しくて楽しくて仕方がなかったです。子どもの頃、習わされたピアノの練習は嫌々やっていましたが、好きでやる練習は時間も忘れてやるものですよね(笑)。
  • (S)現在はどういった活動を?
    (山下さん)多くの人にクロマチックハーモニカを知ってもらいたいと思い、東北から九州まで各地で演奏活動をしています。会場でいつも必ず「クロマティックハーモニカってご存知ですか?」と聞くんですが、やはりほとんどの方が知らないというのが現状です(笑)。東京では神田で教室を開いています。現在生徒さんは70名ほどいまして、退職後の方や会社帰りのサラリーマンの方、大学生などさまざまです。
    趣味として始められる方が多く、ほとんどの方が楽譜も読めない初心者の状態からスタートしますが、大体3ヶ月くらいで簡単な楽曲は吹けるようになりますよ。
  • 大きな可能性を秘めた楽器

    (S)クロマティックハーモニカのどこに魅力を感じますか?
    (山下さん)ジャズ、ポップス、タンゴ、演歌、童謡など、この小さな一本でどんなジャンルの曲も演奏できるところです。それとやはり音色ですね。独特の哀愁ある響き。表現力の部分でも他の楽器にはない魅力があります。
    生徒さんに教えていても感じるのですが、同じ曲を演奏してもひとりひとり全く音色が違うんです。人はそれぞれ声が違いますよね。ハーモニカは吹いたり吸ったりすることで音が出るので、歌声がそのままメロディになるようなイメージです。ですから音にその人の人生が反映されるというのもわかる気がします。口で吹くので、感情や思いを表現しやすいのかもしれません。
  • (S)どういう思いで演奏活動を行っているのですか?
    (山下さん)以前コンサートで「赤とんぼ」と「愛の讃歌」を演奏した時、「死んだ母が好きだった曲でグッときてしまった」と涙された方がいらっしゃいました。涙を流すほどこの音色がその方の心に響いたんだなと思い、私も感激してしまいました。そんな風に、「すごく良かった」とか「心に染みた」と喜んでもらえるのがとても嬉しいです。この楽器をもっと広めたいと思う原動力になっていますね。
    楽器店でのインストアライブやイベント広場で演奏することもあるのですが、歩いている人が足を止めて聴いてくださったり、興味津々の眼差しで見入ってくださる方は多いです。「一体何の楽器を吹いているの?」って。
    この音色が人を惹き付けるのでしょうね。
  • もっと多くの人に聴いてほしい

    (S)これからの展望を教えてください。
    (山下さん) 私はいつもマイクを持って演奏するスタイルなのですが、これは表現の幅を広げたいという思いからです。今までのハーモニカ奏者の方はマイクを使わない方が多く、広い会場だとものすごく大きな音で吹かなければなりませんでした。でもマイクがあると、ささやくような繊細な表現もできます。
    クロマティックハーモニカは夢と可能性が詰まった魅力的な楽器です。まずは演奏活動を通して多くの方にこの楽器の存在を知っていただきたいです。また、自分自身の夢にも挑戦したいと思っています。
  • (取材を終えて)。
    インタビュー後、夕日をバックに山下さんの演奏が始まりました。ノスタルジーな音色と息使いまで伝わってくる独特の響きに、一瞬にして心を奪われました。一般的なハーモニカとは違った、新しい音楽の世界がそこにはありました。
    落ち葉が彩るこの季節。クロマティックハーモニカの調べは、センチメンタルなこの時季が最も似合うと感じました。
    [11月のコンサート情報]※詳細はHP.ブログにてご確認ください
    ■11/7(金)昭島モリタウン フライデーコンサート
    11/21(金)東京ビッグサイト 2014楽器フェア出演
    11/22(土)Reistyle Live in 大阪(詳細はHP.ブログにて)
    11/23(日)東京ビッグサイト 2014楽器フェア出演
    取材・文 鈴木ハルカ  
    写真 中根佑子