• 10号READ特集
    「フラガールズ甲子園」をご存知ですか? この大会では今年も「フラ日本一」を目指して 女子高生たちが華やかなステージを繰り広げました。 フラの何が、彼女たちをこれほど夢中にさせるのでしょう? 女子高生はもちろん、多くの日本人に愛される フラの魅力に迫ってみました。

    一般的にはフラダンスと呼ばれますが、もともとハワイ語のフラ[Hula]には「踊り」の意味があるため、本文中ではフラと表記します。

    写真:関東学院高等学校 チーム「Golden Hawaiians」

  • 日本でも多くのファンがいるフラですが、そのブームの発祥の地が映画『フラガール』で有名な福島県いわき市です。1970年代半ば、炭坑の地下湧水の温泉を利用し、“常夏”ハワイをイメージしたリゾート施設「常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)」が誕生。そのステージで若きフラガールたちが踊るフラが大人気となり、全国に広まったと言われます。 今回は、初代フラガールから直々に教えを受け、現在は「フラガールズ甲子園」のダンス指導も務める我妻純子さんに、フラの魅力についてお話を伺います。

    写真:鹿児島県立種子島中央高等学校 チーム「Kai ‘Ohana ♪Ehukai

  • (プロフィール)
    我妻純子(あづまじゅんこ)/Red Story School理事・NPO法人フラガールズ甲子園理事 1985年、スパリゾートハワイアンズ附属常磐音楽舞踊学院のダンシングチームメンバーとなる。卒業後は、レイモミ小野フラスクールのインストラクター・教授として、いわき市のほか、郡山などでフラの指導にあたる。2004年、ホノルルフラコンペティションにレイモミシスターズとして出場し、ワヒネ部門で優勝。フラガールズ甲子園には、2011年の第1回大会より携わり、15年の第5回大会では競技委員会相談役を務める。ハワイアンネームは「レイロケラニ純子」。
  • 歌と踊りで、想いを伝えるフラ

    (SHIMICOM、以下S)以下S まず、フラとはどんな踊りなのでしょうか?
    (我妻さん)  フラと聞くと、ほとんどの人が手を波打たせる踊りをイメージされますよね。これはフラの中でも代表的な動きのひとつで、腕をしなやかにウェーブさせて、「波」が海辺に柔らかく打ち寄せる様子を表現しています。このように、フラには手話のような要素があって、一つずつの動作が何かの意味を表します。例えば、両手で丸を作り、頭の上に掲げて仰ぎ見れば「太陽」や「月」。ほかにも「風」や「魚」、「花」など、動きと意味がつながっているので、初めて見ても意味がわかりやすいのです。 ハワイにはもともと文字がなかったため、このようにして神さまへの感謝や願いを身振り手振りで伝えたのが、フラの原点と言われています。また、お祭りのしきたりや歴史、過去の自然災害などを未来に伝えるためにもフラが使われました。ハワイの人たちは書物や石碑ではなく、踊りで子孫にメッセージを残したのです。

    両手を上げたポーズは「花(Pua)」、手を重ねたポーズは「いとおしい・愛撫する(Mili)」の意味を表します。 写真:学校法人中野学園 オイスカ高等学校 Makani ‘olu ‘olu ~心地よい風が吹く~

  • フラの魅力は自然な笑顔

    (S)我妻さんがフラを始めたきっかけは何ですか?
    (我妻さん)  私はいわき市で育ったので、子どもの頃から常磐ハワイアンセンターのことは知っていました。一度は東京で就職したのですが、やはり地元で働きたいと思い、常磐音楽舞踊学院で踊りの勉強をしながらハワイアンセンターのステージに立つことにしたんです。学生の頃に新体操の経験があったので体を動かすのは得意でしたが、やはり人前で踊るのはかなりハードでした。それにその頃は、ショーの演目はフラだけでなく、タヒチアンダンスやフラメンコなどもありましたから、毎日踊るだけで精一杯だったんです。 その後、学院を辞めて指導者になり、あらためてフラについて学び始めて、その奥深さにすっかり魅了されてしまいました。フラには、ショーで踊る華やかな「アウアナ(現代舞踊)」のほかに、打楽器のリズムで踊る伝統舞踊の「カヒコ」やハワイアン楽器の演奏など、さまざまな要素があります。全部を学ぼうとすると、いくら時間があっても足りないほど。それくらい、フラの世界は奥深く、楽しいんです。
  • 髪に飾る花一輪でハワイ気分に

    (S)なぜ今日本で、フラはこれほど人気があるのでしょうか?
    (我妻さん)  フラの魅力は何といっても、“非日常的な楽しさ”ではないでしょうか。日本人は忙しいし、普段は周りに合わせておとなしく生活しています。でも、カラフルなムームーやパウスカートを着て、頭に花飾りをつけるだけで、その華やかさに心がウキウキしてきて、“いつもの自分”を束の間忘れることができるんです。 その可愛らしい衣装をつけてフラを踊っていると、だんだん心が軽く、明るくなって自然に笑みが浮かんできます。この笑顔こそがフラのいちばんの魅力だと私はいます。よく「表情はどうやって指導するのですか」と聞かれますが、笑顔の作り方を教えたことはありません。フラを踊れば誰だって、素敵な笑顔になってしまうのですから。
  • 写真:鹿児島県立古仁屋高等学校 チーム「Ke aloha amami」

  • 関東学院高等学校 チーム「Golden Hawaiians」

  • (S)フラは誰でも踊ることができますか?
    (我妻さん)  年齢や身体能力、ダンス経験などを問わず、誰もが楽しめる懐の深さもフラの魅力です。初心者の方なら、最初はハワイアン音楽に身をゆだねて、見様見真似で体を動かすだけで充分です。ハワイアン音楽は、ゆったりしているので、リズムに乗るのが苦手な人でも、すぐに踊れるようになります。 フラの教室は日本全国にありますし、最近はハワイアンフェスティバルなど、人前でフラを踊れるイベントがたくさん開催されています。華やかな衣装をつけて、仲間と一緒にレッスンの成果をステージで披露するのは、とても楽しいものですよ。
  • 初代フラガールの夢を未来へ

    (S)さて、フラガールズ甲子園とは、どんなイベントなのでしょうか?
    (我妻さん)  日本全国の高校生が集まって開催されるフラの競技大会で、おかげさまで今年で5回目となりました。 この大会は、常磐ハワイアンセンターの初代フラガールのリーダーを務めたレイモミ小野先生の熱い想いから始まったものです。先生たちは、当時は珍しかったフラを勉強し、町起こしのためにステージに立たれたそうです。そのご経験から、「感受性の強い10代のときにフラを体験すれば、フラのエッセンスをすぐに吸収できるし、その後の人生にも幅が出る」と考えられたと伺いました。そこからフラガールズ甲子園というアイディアが生まれ、私たち後輩もみんなで協力することになりました。 その頃はまだスタッフが少なかったので、数人のメンバーで手分けをして募集要項を作ったり、地元の高校を回って説明をしたり。もともとはどこかの体育館を借りて、地元の高校生が参加する小さなお祭りくらいのものを考えていました。それが今では日本全国から高校生たちがこの大会を目指してきてくれるようになって、私たちとしても予想外の喜びを味わっています。

    東京都立町田工業高等学校 チーム「パウレ*オハナ」

  • (S)参加する高校生たちについて教えてください。
    (我妻さん) 今年は福島を含む東北各県や、東京、大阪、鹿児島などから21校が参加しました。参加者のほとんどが高校生になってからフラを始めた初心者です。大会の前に、私たちが日本各地で合同レッスンをするのですが、高校生の吸収力は素晴らしいですね。内気な子も踊っているうちにぱっと表情が明るく、のびのびと体を動かすようになってきます。 この大会がきっかけでフラの楽しさに目覚めて、卒業後も続けているという話もよく聞きます。フラガールズ甲子園には「フラガールズOG モエウハネ」という組織があって、この大会に出たOGたちの交流の場になっています。今年も何人かのOGが屋外のステージでフラを踊ったり、ステージ清掃のボランティアをしたりと、後輩たちを温かく応援してくれています。
  • フラガールたちへのメッセージ

    (S)フラを通じて伝えたいことは何ですか?
    (我妻さん) フラを踊ると、誰もがきっと笑顔になって、気持ちがふわっと軽く、温かくなってくるのを感じるはずです。私自身もステージに立ち、指導していくなかで、1人でも多くの方にそんな体験をしてもらい、フラの素晴らしさを伝えていきたいと思っています。 フラガールズ甲子園に出場する高校生には、みんなでひとつの目標に向かって協力する楽しさや達成感を知ってほしいです。高校生のときにこうした経験をすることは、社会に出た後もかならず役に立ちますから。
  • (取材を終えて)
    フラガールズたちの素顔が見たいと、取材に伺った直前リハーサル。舞台が使えるのは各校たった15分間だけということで、立ち位置や入退場のルートを確認する高校生たちの表情は、緊張に引き締まっています。ところが音楽がかかって踊り始めるとみんな、花が咲くように愛らしい笑顔を浮かべるのです。「ここでみんなと踊れて、幸せ!」。そんなオーラが温かな波のように打ち寄せてきて、客席にいた私たちも引き込まれ、思わずニコニコしてしまうほどでした。我妻さんが「誰でも踊れて、誰でも笑顔になれます」とおっしゃるフラには、見る人まで笑顔にしてしまう、不思議な力があるのですね。フラガールズたちの笑顔に癒されながら、私も思わずフラを踊ってみたくなりました。
    2015年8月22~23日の2日間にわたって開催された第5回フラガールズ甲子園。最優秀賞は福島県立いわき総合高等学校が受賞しました。 フラガールズ甲子園 http://www.hula-girls.net/
    取材協力;フラガールズ甲子園実行委員会
    取材・文:市原淳子  
    写真:中根佑子