• <

    6号READ特集
    「街へ出よう、本と出会おう」

    トラックの中をのぞくと そこには、たくさんの本、本、本---- 子どもの頃によく読んだ懐かしい絵本。 外国の不思議な風景写真が並ぶビジュアルブック。 休日にのんびり読みたい詩集やエッセイ集。 このトラックの中で出会ったら 自分だけの特別な1冊になってしまいそう。 今日もBOOK TRUCKは、西へ、東へ。 普通の本屋さんより少し気まぐれな 旅する本屋さんのお話をお届けします。

  • BOOK TRUCKは、車に本を積んでさまざまな場所に出店する移動式の本屋さん。 店主の三田修平さんは、出店場所に合わせて選んだ約500冊を水色のトラックに積み込んで販売しています。 トラックは大人も楽に立って歩けるほど天井が高く、ドアからは、涼やかな風が吹き込んできます。 親子連れが多いイベントなら絵本を多めに。 アート好きが集まる場所なら写真集やアートブック、 またアーティストの自伝や詩集もよく売れるのだそう。 「今日はどんな本が喜ばれるだろうか?」 そんな想像をしながら本を選ぶ三田さんが、本の面白さに目覚めたのは意外に遅く、大学生のときだったそうです。 本好きはもちろん、普段あまり本を読まない人も大歓迎! もしかしたら、このBOOK TRUCKで運命の1冊に出会えるかもしれません
  • (プロフィール)
    三田修平(みたしゅうへい)/BOOK TRUCK店主
    大学を卒業後、「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」、「CIBONE 青山」を経て、渋谷の出版社兼書店「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」の店長を開店から4年間務め、独立。2012年3月に移動式本屋「BOOK TRUCK」をスタート。2013年10月に固定の店舗「BOOK APART」をオープン。みなとみらい「Orbi Yokohama」、そごう・西武各店『ハニカムモード」などをはじめとする書店やカフェなどでもブックセレクトを担当。書店づくりなどについての講演も行う。
    Facebook
    http://www.facebook.com/Booktruck
  • 子どもの頃の移動図書館の思い出

    (SHIMICOM、以下S)BOOK TRUCKを始めたきっかけを教えてください。
    (三田さん)子どもの頃、僕が住んでいた街にときどき移動図書館がきていました。その大きなクルマの中に入れるのが嬉しくて、すごくワクワクしたのをよく覚えています。小さかったので、どんな本を借りたかは忘れてしまったのですが、とりたてて本好きではない僕でも、すごく楽しみにしていました。 本格的に読書が好きになったのは、大学生になってからです。僕は会計士になりたくて勉強に熱を入れていました。でも周りにはそういう学生がいなくて、授業の空き時間は一人図書館で過ごしていました。勉強の足しになるかな、と金融や経済をテーマにした小説を読むうちに、本の面白さにすっかりはまってしまって、他の日本人作家、海外小説や純文学や哲学書、と読書の幅がどんどん広がっていったんです。夢中になって読むうちに、みんなに読書の面白さを知ってほしいと思うようになり、本屋で働こうと思い始めました。
  • BOOK TRUCKは誰でも自由に入ることができるようになっています。 入り口にある木製の階段は三田さんのお手製。
  • 出会う楽しみ、選ぶたのしみ

    (S)どんな本を置いているのですか?
    (三田さん)うちで扱っているのは、ほとんどが古書です。品揃えは絵本やアートブック、小説、詩集、エッセイ集、自伝などさまざま。それをどう並べてお客さんを引きつけるかが、BOOKTRUCKの面白いところです。 こういうイベント会場を通りがかる人は、まさか本屋があるなんて予想していないわけですよね。そういう人に「何だろう?」「面白そう!」と思ってもらうためには、実は見た目がすごく重要なんです。ですからトラックなら何でもいいわkではなくて、大きさもさることながら見た目にかわいいと思ってもらえる車を選びました。 本箱の並べ方にしても、同じ高さの箱をそろえるのではなく、わざとデコボコにしてみたり、色や大きさで変化をつけてみたり。どうしたらお客さんがワクワクするか、気持よく感じるか。それを考えながら、ああでもない、こうでもないと、何度も箱を組み替えるので毎日見た目が変わります。
  • (S)いちばんこだわっているポイントは?
    (三田さん)とくに工夫しているのは、本の見せ方です。 表紙を手前に向けて並べることを[面(めん)だし]をいうのですが、BOOKTRUCKでは面だしした本が看板がわり。「ここはファッションのコーナーです!」「こちらはアートですよ!」とアピールしてくれるんです。 もうひとちは、本箱の中身。普通、本屋さんでは、本が探しやすいようにアイウエオ順や、出版社別に本が陳列されていますよね。でも、BOOKTRUCKでは、ひとつひとつの本箱が「80年代アート」、「食にまつわる作品」「映画やお芝居」という具合に、テーマをもったコーナーになっているんです。 ですから興味をもって近づいてきた人は、「ここにはどんな本があるんだろう」と、自分で探すことになります。そういう発見の楽しさも味わってもらえたらいいなと思っています。
  • 出会いはサプライズ!

    (S)BOOKTRUCKならではの楽しみ方は?
    (三田さん)BOOKTRUCKには、普段何もないところが突然本屋になるというサプライズ感があります。そんな本屋なら、普段本を読まない人も「ちょっと入ってみようかな」と思うかもしれませんよね。思いがけないところで出会った本は、普段読んでいる本よりも印象深いものではないでしょうか。実は僕にも、そんな経験があります。子どもの頃、法事で祖母の家について行ったとき、暇つぶしにと本を買ってもらったんです。いつもと違う場所だったことで、自分があの日、祖母の家で本を読んでいたことが、情景とともに今でもはっきり記憶に残っています。 お客さんも、ここで出会った本には特別な親近感をもってくれるようで、普段はあまり読まないジャンルの本でも、「記念に」と買ってくれる人もいます。買わずに帰った後で、「やっぱりあの本が気なるけど、今はどこにいますか」とわざわざ連絡をくれて、BOOKTRUCKが出店しているところまで足を運んでくださる方もいますよ。
  • (S)いちばんうれしいのは、どんな時ですか?
    (三田さん)やっぱり、本が売れたときです。お客さんがここで出会った本に、「ほしい!」と魅力を感じてくれた、ということですから。僕自身も、読みたい本が見つかったときは「やった!」と幸せになりますから、気に入った本を見つけたときのお客さんの気持ちは、すごくよくわかるんです。 そういう出会いのチャンスが少しでも増えればと、出店する場所に合わせて、商品の内容を変えています。例えばここ、二子玉川は親子連れが多いので、絵本が多め。子どもたちは、自分がすでに持っていて、毎日のように読んでもらっている本でも「これがいい!」と抱きしめたりするので、面白いですよ。レジで「同じの持ってるんですけどね」と言われるお母さんもよくいらっしゃいます。地方のイベントでは、実用書とカルチャー系が人気の半々くらいですね。学生の多い街やビジネル街では、読み物系の本がよく売れます。
  • 働くクルマが大好きというお子さん。 トラックの本屋さんを見るのは初めてかも?
  • 「あ、この本、探してたんだ!」 こんな場所で出会えるなんて不思議
  • (S)三田さんにとって、読書とは?
    (三田さん)物語の筋を追うだけなら、テレビや映画など、ほかのエンターテイメントがたくさんあります。それに比べると、本は自分で想像をふくらませて物語に入っていくという手間がかかりますよね。でも、そのちょっとした手間が、読書のいちばん楽しいところではないでしょうか。 その上でストーリーに引き込まれて一気に読むのも気持ちがいいですし、お気に入りの本を時間をかけてじっくり読んでリラックスするというのも素敵だと思います。 かつての僕自身のように、「本って面倒くさい」と食わず嫌いになっている人も、一度読み始めると、案外読書にはまるかもしれません。BOOKTRUCKがそんな人と本との出会いのきっかけになれればうれしいですね。
  • (取材を終えて)
    手作りの木製の階段を上って、トラックの中へ入ってみると、思いのほかゆったりしたスペースがあることにびっくり。読んだことのある本も、まったく知らない本も、BOOKTRUCKに並ぶと、なんだか新鮮に感じます。 普段はあまり手に取らないジャンルの本も、本箱から取り出して、めくってみたくなるから不思議。車内を吹き抜ける風が心地よくて、カフェでゆっくり本を読みたくなり、ある絵本作家さんのエッセイ集を買いました。意外なところで巡り会ったこの本は、忘れられない1冊になりそうです。 もし、家の近くで、お出かけ先でBOOKTRUCKを見かけたら、気軽にのぞいてみてください。きっと面白いものがみつかるはずですよ!
    各地のイベントなどに招待されて出店するBOOKTRUCK。普段は都内や近郊で出店していますが、過去には福島県や長野県まで出張したこともあるそうです。今後は出店の範囲を広げていきたいと話す三田さんのBOOKTRUCK出店スケジュールや場所は、Facebookで紹介させています。http://www.facebook.com/Booktruck
    取材・文:市原淳子  
    写真:中根佑子