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    7号READ特集
    「夏の夜空の恋物語」

    いつもは星をあまり見ない、という人も七夕だけは特別。 織姫星と彦星のロマンティックな恋物語を思い浮かべたら、 年に一度のデートを応援したくなるはずです!

  • 天帝(※1)の娘・織女(しょくじょ)と牛飼いの牽牛(けんぎゅう)は結婚した後、遊び暮らしていたため、天帝の怒りに触れ、大河の両岸に引き離されてしまいました。その後、悲しみにくれる織女を天帝が哀れみ、年に一度、7月7日の夜にだけ川に橋をかけ、2人が会うことを許されました。 これが七夕の物語。2人を隔てる大きな川が、天の川。そして日本では織女が織姫星、牽牛は彦星と呼ばれています。 七夕の夜、年に一度だけのデートを楽しむ2人の星と、天の川はどうやって見つけたらよいのでしょう? 星の専門家・小野智子さんに教えてもらいました。 ※1・・・中国の伝説で、世界のすべてを支配する神様。
  • (プロフィール)
    小野智子(おの ともこ)/国立天文台天文情報センター 広報専門員
    1968年青森県五所川原市生まれ。小学校入学前、初めて天体望遠鏡で木星とその衛星を観察したことをきっかけに天体に興味をもつ。東京学芸大学大学院で教育学と天文学を学び、修士課程修了。兵庫県立西はりま天文台で星の魅力を伝える仕事を4年間続けた後、現在は東京都三鷹市の国立天文台に勤務。宇宙の姿や、宇宙の謎を解き明かすための研究計画などを多くの人にわかりやすく紹介する広報を
    Website
    国立天文台(NAO)http://www.nao.ac.jp
  • 日本に伝わる七夕の物語

    (SHIMICOM、以下S)七夕のお話は、誰もが一度は聞いたことがありますね。
    (小野さん)七夕のお話はもともと中国で生まれたものですが、日本にもオリジナルの物語がありますよ。 「ある青年が、美しい天女の羽衣を隠してしまいます。 天に帰れなくなった天女と青年は結婚し、幸せに暮らしますが、ある日、天女は羽衣を見つけ、天に上ってしまいます。後を追って天たどりついて青年は、喉が乾いていたため、天女の父親から差し出された瓜を割って食べようとしました。ところが、瓜からあふれた水が大河となって、2人の間を隔ててしまった」という物語です。父親が娘と青年を引き離そうとするところが面白いですよね。 旧七夕頃は月は上弦より少し前で、ボートのような形をしています。 この月が、織姫が彦星に会いに行くための渡し舟と言われています。 雨が降って天の川の水かさが増すと船頭さんが船を出してくれないので、七夕の夜は晴れを祈るんですね。
  • 星と天の川の見つけ方

    (S)織姫星と彦星は、どうやって見つけたらよいですか?
    (小野さん)7月7日頃なら、夜9時頃に東の空を見てみてください。とても明るい3つの星がつくる「夏の第三角」が見えます。一番高い位置に見える「こと座のベガ」が織姫星。ベガより南寄りで、地面に近い、低いところに見える「わし座のアルタイル」が彦星です。二つの星が、天の川を挟んで対岸に輝いていることから、川の両岸に離ればなれになった2人と結びつけられたのでしょう。 アルタイル(彦星)に比べると、ベガ(織姫星)のほうがだんぜん明るい星です。女性のほうが華やかに輝くからでしょうか。アルタイルのほうが遅れて昇ってくるので、遅刻した彦星は、織姫に頭が上がらないのかもしれませんね。
  • 上の方に白く輝いているのが「こと座のベガ」(織姫星)。 右下の少し離れた位置にあるのが「わし座のアルタイル」(彦星)で、左下の「はくちょう座のデネブ」と結ぶと、夏の大三角になる。
  • (S)天の川はどうしたら見られますか?
    (小野さん)天の川はとても微かに輝く星の集まりです。 月明かりや街灯など明るいとかき消されて見えなくなってしまうので、できるだけ暗いところで観察するといいですね。 見つけ方は簡単です。夏の第三角のひとつに、「はくちょう座のデネブ」という明るい星があります。デネブの周りにある明るい星を線で結ぶと、十字架のような形のはくちょう座が見えてきます。この十字架沿いに、淡く光っているのが天の川。 そのまま天の川を南の方にたどると、天の川の中でいちばん星が多くきれいなところが見えてきます。ちょうどさそり座やいて座あたりです。 実は、天の川を見たことがないという人は、意外と多いんです。 街を離れれば意外によく見えるので、旅先などで月のない夜にぜひ探してみてください。
  • 星空の楽しみ方

    (S)初心者でも天体観測はできますか?
    (小野さん)もちろんです。夏の夜は寒くないので、リラックスして星空を楽しめますよ、星空をよく見るためのポイントは、なんといっても暗い場所に行くこと。アウトドアが好きなら、海辺や山のキャンプ場などで星を見るのも素敵です。よく晴れて雲のない夜は、星見の絶好のチャンス。月明かりがあると、微かな光が見えなくなってしまうので、できれば月明かりのない新月の晩がベストです。天体観測をさらに楽しみたいなら、コンパスと星座早見盤、双眼鏡や望遠鏡もあるといいですね。それから、ぜひ用意してほしいのが、リクライニングチェアやピクニックシート。寝転がって夜空を見ると、視界が一気に広がって、星でいっぱいの空に包まれているような感覚になります。星空観察会などでは、寝転がっただけで「うわぁ、すごい!」と歓声が上がります。
  • (S)星座を見つけるコツってありますか?
    (小野さん)それでは、一番簡単な北極星を探してみましょうか。北極星は北の方角に、東京なら35度の高さにある星です。まず、コンパスで北を確認してから、腕をいっぱいに伸ばして、握りこぶしを目の高さまで上げます。ここを0度として、こぶしを縦に3回重ねて、最後にこぶしを横向きにして重ねると、大体35度。こぶしの先に北極星が輝いているはずです。 星座早見盤を使って自分で星座を見つけると、きっと感動しますよ。例えば、星座早見盤の真ん中あたりにある北斗七星などは、かなり小さく描かれていますが、実際はすごく大きいんです。反対に、早見盤のふちに描かれている星座は横に伸びて、ゆがんでいます。空と早見盤とを見比べて違いを見つけるのも楽しいですし、見つけた星を自由に結んで、オリジナルの星座をつくるのも楽しいですよ。
  • 星空の思い出

    (S)小野さんにとって、とくに印象的な星は?
    (小野さん)小学校に入るか入らないかくらいの頃、10歳年上の兄が小さな望遠鏡を借りてきたんです。そのとき見せてくらたのが木星とその周りを回っているガリレオ衛星。しばらくして見たらその小さな衛星が少しずつ動いているのが分かってびっくりしました。それまではいつも同じところにあると思っていた星が変化すると知ってから、星を見るのが大好きになりました。 小学校高学年から高校生の頃までは、夏になるとよく家の屋根に上がって星空を見ていました。田んぼに囲まれた地域でしたから、邪魔な光もなかったし、トタン屋根のひんやりした感触も気持ちよくて。ずっと見ていると、空が平面ではなくて、奥行きがあるように感じられるんです。中学生の頃は惑星の色や明るさを覚えるのも楽しく、屋根に寝転がって夜が明けるまで。時間を忘れて星を観察していました。
  • 星降る夜を楽しもう

    (S)夏の星空の楽しみ方は?
    (小野さん)7月上旬は、まだ多くの地域で梅雨明け前ですが、梅雨の合間に晴れた夜は、空中の塵が洗い落とされて、透明度の高いきれいな空が表れます。天の川はほぼ一年中、夜空のどこかに出ていますが、夏は天の川の最も明るい場所がよく見える季節ですから、七夕を機にぜひ観察してみてほしいですね。 また、夏は流れ星が多く見れる季節ですが、とくに毎年お盆の頃は、ペルセウス流星群が見頃。今年は新月の時期と重なって条件がいいので、お天気さえよければ例年以上によく見えそうです。 夏と冬の夜空には軽い星が多いので、星座探しも楽しめますが、まずは親しい人と一緒にゴロンと横になって、楽チンな姿勢でゆっくり星空を眺めてみてください。星座を見つけたら、周りの人に教えてあげて、みんなでワイワイ盛り上がる。そうやって楽しんでいるうちに、きっと星空や宇宙のとりこになってしまいますよ。
  • 夜空をじっくりと見上げていると、星々がまたたきながら、ゆっくり、ゆっくり動いているのがわかります。
  • (取材を終えて)
    初めて訪ねた国立天文台。小野さんに、直径50センチの大きな望遠鏡を見学させてもらったとき、ふと目についたのが、かわいいてるてる坊主でした。「年1回の天文台公開日になぜか、雨降りが続いてしまって……」という説明に納得。 七夕の頃も、まだ梅雨は明けていないでしょう。お天気がどうなるか、気になります。子どもの頃を思い出して、織姫と彦星が会えるようにてるてる坊主を作って、どこかで寝転がって星空を眺めてみたくなりました。
    協力;Vixen
    取材・文:市原淳子  
    写真:中根佑子