• 10月号READ特集
    「土鍋でいただく秋のごちそう」

    実りの秋は、食欲の秋!
    さつまいもに栗、そしてきのこ。 秋の味覚を、おいしくしてくれるのが土鍋です。 なかでも、「伊賀焼の土鍋」なら簡単便利で、失敗しらず。 一度使ったら、きっと 「土鍋を鍋料理にしか使わないなんてもったいない!」 と思うはずです。

  • (プロフィール)
    左/長谷園 東京店イガモノ店長 長谷伊佐子さん(ながたにいさこ) 三重県伊賀市にて伊賀焼窯元「長谷園」7代目・長谷優磁氏の末娘として生まれる。「多くの人に伊賀土鍋を知ってほしい」と、東京・恵比寿に2004年にオープンした「イガモノ」の店長に就任。以来、土鍋を使った料理レシピの開発や、ワークショップ運営などに携わる。

    右/長谷園 東京店イガモノ企画 櫻井章代(さくらいあきよ) 伊佐子さんの3歳年上の姉。伊佐子さんとともに、「イガモノ」の運営に携わる。主に店内ディスプレイやフードスタイリングなどを担当。 家事や子育ての経験から湧いてくるアイディアや意見を窯元に提案し、商品作りに生かしている。 伊賀焼窯元 長谷園HP http://www.igamono.co.jp/

  • いつも土鍋のある暮らしを

    (SHIMICOM、以下S)お二人は小さい頃から、いつも土鍋や伊賀焼に囲まれていたのでしょうか。
    (櫻井章代さん、以下章代さん)私たちは子供の頃から、料理には土鍋を使うのが当たり前でした。学生時代、妹と二人暮らしを始めたときも当然、土鍋をもっていきました。ところがその土鍋を火にかけても、ぜんぜん沸騰しません。「土鍋は最初におかゆを炊いて、土のすきまを埋めないとお湯が沸かない」と聞いたことはあったけど、新品を下ろすのは初めてだったのでピンときていなかったんです。まるで土鍋初心者みたいだねと、妹と顔を見合わせました。
    (長谷伊佐子さん、以下伊佐子さん)その後、友達の家に行ったりするうちに「土鍋のない家もあるんだ」と、ようやくわかってきました。それに、田舎の家では土鍋を置く場所には困りませんが、都会の限られたスペースに土鍋を置くのは、かなり大変だと知ったんです。この経験から、「ごはん用」「鍋料理用」などと、使い道を分けるのではなく、どんなお料理にでもマルチに使える土鍋があったらいいなと考えるようになりました。
  • 伊賀焼とは、どんな焼き物ですか?
    (伊佐子さん)伊賀焼は約1300年前に、今の三重県伊賀市あたりで生まれたと言われています。ここの地層は「古琵琶湖層」と呼ばれ、400万年前に生息していた生物や植物の有機物が多く含まれているんです。その土を高温で焼くと、有機物が燃え尽き、焼き物の中に小さな孔がたくさんできます。 この孔があるおかげで、伊賀焼の土鍋はゆっくり温まり、遠赤外線効果によって食材にじわじわと熱が伝わって、うまみをしっかり引き出すことができるんです。また、保温力も高いので、火から下した後もとろ火状態のまま。煮込み料理などもおいしく仕上がるんですよ。
    (章代さん)伊賀焼は火に強いので、昔から直火にかけて使う調理道具などとして愛用されてきました。桃山時代になって茶の湯が盛んになると、伊賀焼ならではの素朴で力強い風合いが茶人に好まれ、茶道具もたくさん作られるようになりました。そんな時代を経て生まれたのが、ごはん炊き専用の土鍋「かまどさん」です。
  • (S)ごはん炊き用の土鍋は、普通の土鍋とどんなところが違うのですか?
    (章代さん)普通の土鍋でもおいしいごはんは炊けます。でも、火加減の調整が難しいので、板前さんなど限られた人しかごはん炊きに土鍋を使いこなせませんでした。そこで私たちの父で、長谷園7代目当主の長谷優磁が「土鍋で炊いたごはんのおいしさを知ってほしい!」と思い立ち、誰ても簡単に使えるごはん用の土鍋を開発し始めました。試作した土鍋の数は一万個以上。いいものができるたびに母がごはんを炊いて、家族総出で「噴きこぼれる」「ムラができる」など使い勝手を話し合い。三年ほど試行錯誤をしたのを覚えています。
    (伊佐子さん)「かまどさん」の一番の特徴は、火加減を心配しなくていいことです。中強火にかけると、まず土鍋にじわじわ熱が伝わります。加熱時間は10分ほど。火を止めた後も沸騰状態が続き、そのままごはんをちょうどよく蒸らすことができるんです。つまり火加減いらずで、昔から言うごはん炊きの極意「初めチョロチョロ中パッパ」の通りになるんです。
  • (レシピ)さつまいも丸ごととはん

    材料(4?5人分)

    白米 2合
    さつまいも 1?2本
    水 370ml
    酒 大さじ2 
    塩 小さじ1/2
    使用土鍋 かまどさん(三合炊き)
    作り方
    1米をとぎ、かまどさんに入れる。水・酒・塩を加え、20分間浸水する。
    2さつまいもをよく洗い、両端を切り落とし、1に乗せてふたを閉じる。
    3中強火で12分間加熱したら火を止め、そのまま30分間蒸らす。
    4しゃもじでさつまいもを崩して米をよく混ぜてから盛り付ける。
  • 土鍋料理のフルコースにも挑戦

    (S)鍋料理やごはん炊きのほかに、土鍋はどんなふうに活用できますか?
    (伊佐子さん)意外かもしれませんが、土鍋は揚げ物以外、どんな料理にも使えるんですよ。煮物やスープはもちろん、すのこを使えば蒸し料理もできますし、オーブンに入れられるのでデザートも作れますので、この後、土鍋で作る「かぼちゃプリン」をご紹介します。最近は、空焚きできる土鍋もあるので、フライパンのように使って炒め物をしたり、肉や魚をグリルしたり。土鍋の中で燻製をつくることもできるんですよ。土鍋がいくつかあれば、フルコースだって作れます(笑)
    (章代さん)お料理を土鍋ごと食卓にだしても、さまになるのもいいところ。お皿を使わなくてすむので洗い物が減りますから、私のような主婦には便利ですね。それに、保温性が高いのでお料理がいつもあでも温かく、食材や取り皿を準備しておけば、私も一緒に座れて、家族とゆっくり食事を楽しめるのもいいですね。
  • (レシピ)秋の味覚のバーニャカウダ

    材料(4~5人分)

    かぼちゃ 1/8個
    レンコン 1/4節
    水 370ml
    ブロッコリー 8房 
    まいたけ 1パック
    しいたけ 2個
    ぎんなん 20個

    バーニャカウダソース
    アンチョビ(刻む) 6切れ
    オリーブオイル 大さじ3
    にんにく(すりおろす)1~2かけ

    使用土鍋 ヘルシー蒸し鍋
    作り方
    1具材は洗い、食べやすい大きさに切る。ソースの材料をよく混ぜ、耐熱容器に入れる。
    2土鍋の7分目まで水を入れ、すのこをセットしてふたをして強火にかける。
    3蒸気があがったら、すのこにソースの器を置き、周りに具材を並べ、ふたをして中強火で3分間加熱する。蒸気穴から香りがしたら完成。
  • (レシピ)かぼちゃの土鍋プリン

    材料(作りやすい分量)
    かぼちゃ 200g(種と皮を除いた分量)
    全卵 二個
    卵黄 二個
    生クリーム 200ml 
    牛乳 100ml
    砂糖 60g

    カラメルソース
    上白糖またはグラニュー糖 40g
    水 大さじ2

    使用土鍋 蒸し鍋、小鍋
    作り方
    1小鍋にカラメル用の砂糖と半量の水を加え加熱。泡立ったら残りの水を加え、色づいたら火を止める。
    2ボウルに全卵、卵黄を入れて溶きほぐし、生クリーム、牛乳、砂糖を加え混ぜる。
    3一口大に切ったかぼちゃを蒸し鍋で10分間蒸らし、熱いうちに裏ごしする。
    4かぼちゃを2に混ぜ、天板に熱湯を注ぎ、180度に予熱したオーブンで50分間蒸し焼き。そのままオーブン内で冷まし、冷めたら冷蔵庫に移す、
  • 土鍋でつくる、新しい味、ほっとする味

    (S)伊賀焼の土鍋には、さまざまな可能性があるのですね。
    (章代さん)最近は外国の方のなかにも、土鍋に関心を持つ人が増えています。つい先日も、アメリカでのお食事会にご招待いただいたのですが、そこで新進気鋭のシェフが土鍋を使い、お客様の前でふたをパッと開けるというサプライズ演出をしてくれました。湯気と香りがふわっと立ち上がり、みんな「うわぁ!」と大喜び。欧米のレストランでは料理をシェアすることが少ないので、鍋をみんなでつつくという食べ方も新鮮だったようです。
    (伊佐子さん)忙しくて疲れているとき、私はよく蒸し料理を作ります。土鍋を使えば数分でできますし、食材の味がギュっち凝縮しておいしいから、体がほっとするんです、土鍋で炊いたごはんも、なんとも言えない優しい味。このおいしさ、言葉ではうまく伝えられなくてもどかしいのですが、とにかく一度一人でも多くの人に体験してほしいんです。ごはんは毎日食べるもの。それがとびきりおいしくなったら、毎日がきっと幸せになるはずですから。
  • (取材を終えて)

    「さつまいもごはん」を炊いた土鍋のふたを開けてびっくり!10分ほど加熱しただけなのにさつまいもは芯までほっこり、お米はつやつやに炊き上がっていたからです。さつまいもとごはんの甘い香りが漂ってきて、思わずおなかがぐーっと鳴ってしまいました。手間も時間もかからないのに旬のおいしさを上手に引き出せるのが、伊賀焼の土鍋のパワーなのだな、と炊きたての「さつまいもごはん」を試食させていただいて納得、この秋は、土鍋が活躍する機会が増えそうです。

    (クレジット)
    取材・文 市原淳子
    写真 押山智良
    取材協力:長谷園 東京店イガモノ 

    さまざまなタイプの土鍋をはじめ、伊賀焼の食器や酒器などがところ狭しと並ぶのが、長谷園のアンテナショップ「イガモノ」。土鍋料理のおいしさや楽しさを伝える為のワークショップなども開催されています。
    【長谷園 東京店イガモノ】
    東京都渋谷区恵比寿1-22-27
    TEL:03-3440-7071
    http://www.igamono.co.jp