• 12月号READ特集
    「シダーローズを使ったクリスマスリース」

    12月になると飾られるクリスマスリース。 リースとは、ヨーロッパや北米で翌年の豊作や幸福を願い、また、魔除けの想いを込めて、 常緑樹の木の枝や葉などで作った装飾用の輪のこと。 今、林や森、公園には、色とりどりの葉や木の実がいっぱい。 まるでバラの花のようなシダーローズも見つかります。 今年はこれらを集めて作った手作りリースを飾ってみませんか?

    「森のリース、森の恵み」(河出書房新社)

  • (プロフィール)
    横山美恵子(よこやまみえこ)/フラワーデザイナー 1954年東京生まれ。成城大学文芸学部卒。生け花やフラワーデザインを学んだのち、植物の自然な姿を大切にする作品を発表し続けている。2007年〜2009年「NHKおしゃれ工房」で「草を見る、花を見る」を連載。書著に「草のリース木のリース 野山を散歩しながら作って飾る」(扶桑社)、「森のリース、森の恵み 植物の四季を暮らしに」(河出書房新社)などがある。「よこやまみえこ花の会」主宰。

  •     室内に自然を持ち込みたい

    (SHIMICOM、以下S)横山先生はいつ頃から植物でリースを作り始めたのですか?
    横山先生 30年以上も前だと思います。当時は清里に家がありましたから、冬でもちょっと散歩をすると、かわいい小枝や枯れ葉、木の実などを拾うことができました。ある日、花生けで残ったヒュウガミズキの小枝の繊細な美しさに気づいてふと、「これを飾ってみようかしら」と思いました。冬は花を飾りたくても、花がない時期です。それなら、花を活ける代わりに、小枝を飾ってもいいんじゃないかと。
    S 飾ってみていかがでしたか
    横山先生 飾った瞬間、「小枝ってきれいだな」と思いました。今思えば、これがリースを作り始めたきっかけですね。都会では、自分から「自然にある植物」をすくい上げて持ち込まなければ、家の中には入ってきません。つまり、「自然にある植物」に触れながら生活することができないのです。ぜひ、小枝や葉などを飾って、自然に触れてみてください。きっと何か発見がありますよ。
  • S 本当にいろいろな植物を集めているのですね。
    横山先生 集めていると植物の賢さが分かります。冬に見かけるシダーローズは、ヒマラヤスギの松ぼっくりです。その鱗片1枚1枚の根元に種がついていて、パラパラと散るのですが、種を重りにすることでプロペラのように遠くまで飛んでいきます。落ちると、尖ったつけ根部分が腐葉土に突き刺さり、やがて芽を出すという賢さです。賢さだけではありません。植物は形も面白くて、フウセンカズラの種には白いハートが浮き出ています。また、オジギソウはサヤの中から種だけが落ちるので、最後にはトゲトゲのフレームが残るのです。素材集めをしていると、そんな楽しい発見もあります。
    S そんな植物の中で、クリスマスリースにお勧めの素材はありますか?
    横山先生 リースの土台を作るには、小枝やツルになった草などが必要です。夏に花を咲かせた朝顔のツルを使ってもいいですし、ハーブを乾燥させてもいいと思います。ヒュウガミズキは柔らかくて折れにくい枝なので、ベース作りにお勧めです。シダーローズやドングリも冬ならではの素材。赤い色を入れるなら、ニシキギ、バラの実を入れるといいでしょう。

    日光の山で拾った植物はひとつの箱にまとめて保管。

    ヒマラヤスギの実は、下の種がポロポロと取れ、最後に上だけがポロリと落下。バラのような形から、シダーローズと呼ばれます。

  • リースの素材を集めるために散策していると、たくさんの発見があります。 「森のリース、森の恵み 植物の四季を暮らしに」(河出書房新社)

  • リースの中には自分の森がある

    S リースは誰にでも簡単に作れますか?
    横山先生 初めてでも、すぐに作れます。作品にもよりますが、私の教室では、皆さん2時間半で仕上げていますよ。
    S 作るコツはありますか?
    横山先生 私が作るリースは、枯れ葉が自然に吹きだまりを作るように、ベースの円の中にひとつの世界を表現していきます。つまり、お気に入りの植物が生えている「自分の森」を思い浮かべ、上から木の葉や実がどのように落ちてくるかを考えながらリースを作るのです。森が秋になって色づき、小枝や葉、実を落とす・・・。森の小動物が実をかじってしまうこともあるでしょう。イマジネーションを働かせて、自然に作ることがコツです。自分の森ですから、森の植物に都会の物を混ぜてもいいし、外来種が入ってもいい。南国のちょっと変わった植物を使うのも楽しいでしょう。
    S デザイン画を描いてから、リースを作るのではないんですね。
    横山先生 自然を自分の思い通りにすることはできません。素材と向き合ったら頭を柔軟にして、それぞれの良い点を見つけ、そこを生かすように素材を組み合わせてください。

    リース作りで残った素材はクリスマスツリーに。</p>

    残り素材で作ったプチ・リースはプレゼントとしても喜ばれます。

  • クリスマスリースの作り方

    材料
    ワイヤー(真鍮やフラワーデザイン用のワイヤー)
    木工用接着剤(乾くと半透明になる接着剤)
    花ばさみ
    ベースを作るための小枝(クロモジやヒュウガミズキなど)
    印象的な形のシダーローズ
    その他、装飾用に好みの葉やツル、実など
    作り方
    ベース

    クロモジの枝を輪に丸め、ワイヤーで止めます。金色をした真鍮のワイヤーを使うと、クリスマスらしさが演出できるでしょう。フラワーデザイン用ワイヤーを使うときは、細くて曲げやすい物を選んでください。後から装飾用の素材をつけるため、この時点でワイヤーの結び目をきれいに始末する必要はありません。
    隙間にニシキギなどを挿したり、つる性の常緑植物を巻きつけ、ベースに厚みを出します。強度をもたせたいときは、木工用接着剤で固定してください。クリスマスらしく、モミを挿してもいいでしょう。ただし、モミをベースにすると、種類によっては乾燥すると葉がおちてしまうことがあるので注意が必要です。
  • 装飾
    ベースができたら装飾です。シダーローズは乾燥するとポロポロと落ちてしまうため、裏側に木工用接着剤を多めにつけ、ベースに接着します。ポイントは同じ方向に向けないこと。自然界では、シダーローズや葉などは、あちこち向いて落ちます。藪の中に落ちることもあれば、何かに引っかかってぶら下がっていることもあるはず。それらを考えて複雑に配置すると、自然な雰囲気になります。
    完成
    全体のバランスを見ながら、その他の装飾用素材も接着していきましょう。最後にワイヤーの始末をして、ぶら下げる部分をつけたら完成です。。
  • クリスマスらしい素材を集めるのも楽しい。

    拾ってきた植物は種類別に箱に入れて管理。それもまた、標本箱のようで美しい。

  • 自由な発想で作るリース

    S リースについて、何か注意することはありますか?
    横山先生 私のリースは自由です。リースだからといって丸く作る必要はありません。楕円でもいいのです。気の向くまま作って、好きな場所に飾ってください。自然植物ですから、色が退色するなど徐々に変化していきます。それを眺めるのもまた楽しみのひとつです。例えばキンカンの実は、黄色のまま使うと、だんだん縮んで色が凝縮していきます。少しずつ黒くなる実もあります。色が変化してきたら、植物を足してイメージを変えてもいいでしょう。
    S いつまでも楽しめるのですね。
    横山先生 それが植物を使ったリースの良い点です。皆さん、一度作ると、「次は何を作ろうか」とワクワクするようですね。スモークツリーを使って霧を表現したり、スズメウリをぶら下げて動きを楽しんだり。私は鳥の巣をイメージして作ったこともあります。
    S イメージをふくらませると、素材集めも楽しくなりそうです。
    横山先生 植物に詳しくなりますよ。もちろん、外歩きも楽しくなります。リースひとつで世界が広がります

    実が面白いからと、横山先生が栽培しているフウセンカズラ。

  • (取材を終えて)

    クリスマスリースを手作りするなど考えたこともありませんでしたが、案外簡単で、思った以上に想像力をかき立てられ、楽しく作れました。同時に、今まで気にも留めなかった身近な植物が、とても愛おしい存在に思えてきたから不思議です。今冬は材料集めから始めたいと思いました。

    (クレジット)
    取材・文:吉澤実祐
    写真:タカオカ邦彦 

    「森のリース、森の恵み 植物の四季を暮らしに」横山美恵子・著/河出書房新社

    身近な小枝、草、葉、実を使ったリースづくりを紹介。植物の自然な姿を大切にした作品ばかりで、眺めているだけでも心が癒される。また、植物に出会う楽しさも紹介されている。