• SHIMICOM 5月号
    「海の上のヨガ教室」

    5月。 初夏の浜辺で、不思議な光景に出会いました。 なんと海の上のヨガ教室です。 よく見れば、先生も生徒さんもサーフボードに乗っています。 これは、いったい何でしょう? 今月は、波に身を委ねて心と体を解放する人気のエクササイズ SUP(サップ)ヨガの魅力を紹介します。

  • 〔プロフィール〕

    鈴木 夏樹(すずき なつき)/ヨガ・SUPインストラクター
    神奈川県逗子市在住。赤ちゃんからご高齢者向け、リラックスからパワーヨガなど、幅広いヨガクラスとインストラクター養成コースの講師を経験。セラピストとしては、主に女性のライフステージに合わせたケアを提案している。海、山と、自然が大好きで、子育て中の母でもある。ヨガインストラクターの他、日本SUP協会認定インストラクター、アーユルヴェーダセラピスト、日本マタニティ整体協会認定セラピスト(整体師)の資格を持つ。

    ◎EVER RESORT http://everresort.jp

  • 海とヨガが出会うところ

    ハワイ生まれのユニークなマリンアクティビティSUP(サップ)とヨガ。不思議なこの融合はどのようにして生まれたのでしょうか。

    SHIMICOM(以下S)まずはSUP(サップ)について教えてください。
    夏樹さん SUPとは「スタンドアップ・パドルボード」の略で、パドルと呼ばれる櫂(かい)で水を漕ぎながら、サーフィンや海上散歩を楽しめるマリンスポーツです。
    S 初めて見た時は驚きました。
    夏樹さん ええ、実は私もそうでした(笑)。海の上を漕ぐ姿は、まるで〝一寸法師〟みたいですよね。SUPの発祥は1960年代のハワイと聞いています。波がない日でも海遊びが楽しめると、徐々にSUP人口が増えていったようです。SUPボードは大きくて浮力が高いので、年齢・性別、経験を問わずどなたでも挑戦しやすい水上のアクティビティです。
    S 次に、SUPヨガについて教えてください。
    夏樹さん 10年くらい前だと思いますが、ハリウッドセレブがSUPのフィットネス効果に注目し、話題となりました。また、当時はヨガがヘルシー志向の20〜30代女性の間でブームになり始めて、ならばこの二つを一緒にしたらということで生まれたのがSUPヨガです。

    ボードの浮力が大きいため、思った以上に安心して漕ぐことができた。

    サーフィン用と比べてかなり大きめなSUP(Stand Up Puddle Board)ヨガ用ボードとパドル(櫂)。

  • スタジオを飛び出して、海の上でのヨガ教室。

    SUPヨガのインストラクーを務める夏樹さん。 実は、彼女自身も海の上でのヨガに魅せられた一人とか。

    S ヨガのインストラクターになるきっかけは何だったのですか?
    夏樹さん 昔から自然の中でスポーツをするのが大好きで、スノーボードが趣味の一つですが、2度も骨折してしまい、柔軟性や体作りの必要性を痛感しました。その頃にヨガと出会い、一念発起してすぐにヨガインストラクター学校に通い始めたんです。
    S いきなりインストラクターですか?
    夏樹さん ええ。やるからには趣味感覚で習うのではなく、仕事にしてしまうくらいの覚悟を持って臨みたかったんです。
    S もともとヨガの経験はあったのですか?
    夏樹さん いいえ、まったく。それどころか私、体が硬くて前屈も指がまったく床に届かないくらいだったんですよ。
    S え?それでもヨガを選んだのはなぜですか?
    夏樹さん 社会人になって、心と体の健康とバランスの大切さを感じ、「人生を豊かにするためのツール」としてヨガを取り入れたいと思いました。ヨガは自然が好きな私にとって理想的でしたし、いつでもどこでもできるところも魅力だったのかもしれません。とはいえ、まさか海の上でヨガをするとは、その時は想像もしませんでしたけど。どちらも自然のエネルギーを感じながら楽しめるものですし、伝統は大切にしつつ、ヨガにはSUPだけではなく、まだまだいろんな可能性が秘められていると思います。

    海の上でのヨガレッスン。 「自然を感じてください」と鈴木さん。

  • 目に映るのは水平線だけ。耳に聞こえるのは波の音だけ。大自然に抱かれてのSUPヨガは、究極のリラックス体験でもある。

  • ダイエット効果に、ファッション性。

    SUPヨガには、トレンドに敏感な女心をくすぐるキーワードがいっぱい。

    S SUPヨガの道具について教えてください。
    夏樹さん ボードとパドルとリーシュコード。寒い季節には水着の上にウエットスーツを着用しますが、これからのシーズンはヨガウェアやTシャツに短パンなど動きやすい服装で大丈夫です。最近ではおしゃれなSUPヨガ専用ウェアや水陸両用のヨガウェア、UVカット素材のものなどもあります。
    S ヨガウェアでできるのはいいですね。
    夏樹さん おしゃれさは女性にとって大切なキーワードですからね。でも、自然を相手にするスポーツ、エクササイズであることには変わりありませんから、安全性にも十分に気をつけています。気は引き締めつつも、ゆったりと1時間ほどの海でのひとときを楽しんでいただきたいと思います。
    S 安定感のあるボード板の上にいても、落ちることはあるんですか?
    夏樹さん 時にはバランスを崩して海に落ちてしまうこともありますが、安定型のポーズもご案内するので、無理せずにご参加いただけます。可愛いライフジャケットもありますので、泳ぎが苦手な方でも大丈夫です。
    S どんな場所で行うんですか?
    夏樹さん 私たちは自然を実感してもらいたいので、岸から少し離れたところまでパドルで漕いで行って、そこでSUPヨガを行っています。そのほうが雑音もなくゆっくりできますし、海の揺らぎもより一層感じやすくなるので、心と体の解放にも効果的だと思います。

    取材時は水温が低かったため、ウェットスーツを着用。 SUPボードは、なんと片手で運べる軽さ。

    安定しているとはいえ、そこは海の上。 バランスを崩せばこの通り。 「一度、海に落ちた方が力が抜けていいんです」と夏樹さん。

  • 生まれて初めてのSUPヨガに挑戦!

    • 初めてのSUPヨガ。 まず最初に、砂浜で道具の説明を受けます。

    • SUPボードと身体をリーシュコードで結びます。

    • 準備ができたら、立膝で沖へ向かって漕ぎ出します。

    • 波の穏やかなポイントでアンカー(錘)を沈めて、SUPヨガが始まります。

  • 「みんな、とってもお上手です!」褒め上手の夏樹さんに乗せられて、ヨガ初心者の3人も大胆ポーズ。

  • 自然と、自分と。じっくり向き合うリラックスタイム。

    S 疲れがちな現代人にとってのヨガとは?
    夏樹さん ヨガは心と体のバランスを取るのに最適です。そのためマタニティやシニアヨガ、色々なシーンに合わせたヨガが必要とされているのだと思います。アメリカのウォール街ではヨガができるスペースも増えていて、今は女性のみならず、疲れを感じている男性ビジネスマンに向けたメンズヨガなどもあり、彼らの生活に溶け込んでいます。それだけ多くの方が心身の健康の大切さを感じているということなのかもしれません。ヨガスペースのあるオフィスができたりと、気にいる場所を探していると言えます。
    S SUPヨガはその延長線上にあるのですね。
    夏樹さん そうです。SUPヨガというと特別なもののように思われるかもしれませんが、SUPを使うことで海の上でヨガをすることができるようになったと思っていただければ。ヨガは、場所との相乗効果でより高いリラックスが得られます。
    S スタジオから離れた場所で行うヨガですか。
    夏樹さん ヨガでは最後に頭を空っぽにする時間を設けており、これを「シャバアサナ」というのですが、たった5〜10分この「シャバアサナ」を行っただけで2時間寝た時と同じ効果があると言われています。SUPヨガを体験した多くの方が、こちらまでうれしくなるような本当にいい笑顔になって日常へと帰っていくんです。SUPヨガをあまり難しくとらえず「頭をリセットする」くらいの軽い気持ちでトライしていただけたらと思います。
    S なんだかSUPヨガに興味が湧いてきました!
    夏樹さん まずは体を緩めるウォーミングアップか、座るポーズ、立つポーズと段階を踏んでレクチャーしていきますので、今年の夏は、気軽に体験してみてください。

    「シャバアサナ」で、海の上で寝転び中。 

    波のゆりかごに揺られて、つい海の上だということを忘れてしまう。

  • 海の上では時間の感覚もなくなり、あっという間に1時間が経ってしまった。

  • {編集後記}
    サーフィンやダイビングはちょっと難しそうと、チャレンジする前から諦めてきたマリンアクティビティの中で、やっと挑戦できそうな素敵なエクササイズを発見しました!燦々と照りつける日差しや心地良い海風を感じながら波に揺られ、心と体を解放するSUPヨガ。これなら、なかなか抜けない日頃の疲れともようやくサヨナラできそうです。皆さんも、この夏はぜひ大海原でSUPヨガ、いかがですか?

    取材協力:EVER RESORT http://everresort.jp
    文:久武むく
    撮影:中根佑子